在学生の声~集積回路を研究している大学院生にインタビューしました!~

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集積回路(IC)は、電子機器に欠かせない半導体製品で、スマートフォンやコンピューター、自動車、医療機器など、あらゆる分野で使用されています。電気電子工学科には、集積回路を設計し、実際に試作する研究を行っている研究室があります。今回は、集積回路の研究をしている吉河研究室の大学院生の先田君と長崎君に、研究の魅力について教えてもらいました!

(写真)吉河研究室のメンバー。写真左端と右端が、今回インタビューを受けてくれた先田君と長崎君

吉河研究室では、どのような研究をしているのですか?

先田: 半導体集積回路(IC)の設計と試作をしています。学生ごとに研究テーマは異なりますが、においセンサや、信号変換、高速インターフェース(基板上の高速デジタルデータ通信)に関するIC、ケーブル通信に使用する新規通信方式のICなど、特色のあるICを設計・試作しています。大学でICの設計・試作ができるのは、全国で見てもごく少数の研究室のみで、地方大学でここまでやる研究室は珍しく、本研究室の特徴になっています。実際の“ものづくり”を通して、電気電子工学の面白さを発見し、体験できる研究室です。

例えば、この写真は研究室で試作した「においセンサ」です。調味料ごとに異なるにおいをセンサで検知して、それぞれのにおいを識別することができるようになっています。

(写真)研究室で試作した「においセンサ」と調味料

長崎: 設計・作製したICは、このようにオシロスコープなどの測定器を用いて、想定通りの動作をするか測定をします。企業でも使われているような高価な測定器が揃っており、レベルの高い研究をすることができます。

(写真)オシロスコープにより試作したICの動作確認をしている様子

集積回路はどのように設計・試作するのですか?

先田: まずは、専用の設計ツールで機能設計や回路設計を行い、回路が想定通り動作するかシミュレーションを行います。想定通りに動かない場合は、回路の一部や全体を見直し、再度設計をします。その後、レイアウト設計を行います。レイアウトはパズルのようなもので、ICのチップ内部にトランジスタや抵抗、キャパシタなどを、設計ルールの範囲で、どのように配置し、どのように配線するかを考える必要があります。設計ができたら、外部のメーカーに発注して、作製してもらいます。

研究室に入った時点では、ICを設計する知識は全くありませんでしたが、先生や先輩が丁寧に教えてくれました。このような研究で身につけた知識は、企業に就職してもそのまま使うことができ、研究室OBの先輩方も大手電機メーカーで即戦力として活躍しています。

(写真)設計ツールでICのレイアウト設計をしている様子

先田君と長崎君は、なぜ集積回路の研究をしたいと思ったのですか?

長崎: 高校生の時からエンジニアになりたいと漠然と思っていたのですが、電子回路の講義を聞いて、身の回りにある様々な製品に使われているICを設計してみたいと思いました。回路設計をしている研究室に入れば、自分の目指すエンジニア像と一致すると思ったからです。

先田: 高校時代から“ものづくり”をしたいと思っていて、電気電子工学科に入ったのですが、入学前は“電気工事”のようなイメージしかなく、半導体や集積回路についても勉強できるとは思っていませんでした。ですが、電子回路の講義を聞いているうちに、集積回路が面白そうだし、今後さらに伸びていく分野だということが分かってきました。吉河研に入れば、集積回路に関連した“ものづくり”ができると思って、選びました。

将来、どのような企業に就職したいと思っていますか?

先田: 研究で取り組んでいる集積回路の知識を、就職後にも活かせる企業に入りたいと思っています。当研究室には、毎年多くの企業の方がリクルートに来られており、大手の企業にも入りやすいように感じています。

長崎: 私も同じで、研究で身につけた回路設計の知識を活かせる企業に入りたいと考えています。研究室OBの多くが大手電機メーカーに就職した実績があるので、大手の企業に入れれば良いなと思っています。

お二人とも大学院に進学していますが、なぜ大学院に進学しようと思ったのですか?

長崎: 大学院への進学はして良かったと思っています。学部4年生で就職するとなると、本格的に研究が始まる前に就職が決まってしまうことになります。それよりも研究を通じて、もっと半導体や集積回路の業界のことを知ってから就職先を選びたいと思いました。そして、大学院での研究で身につけた知識を就職してからも活かしたいと思ったからです。

先田: 元々4年生で就職をしようと思っていましたが、大学院へは進学して良かったと思っています。4年生で取り組む卒業研究だと、1年間しか研究ができませんが、1年間では大した研究はできません。せっかく取り組み始めた研究が本格化する前に終わってしまうと思います。私はやりがいのある研究テーマを与えてもらえたので、大学院で長く、深く研究をすることで、卒業後のキャリアにも繋がると思いました。

お二人とも、研究の成果を国際会議に投稿したとお聞きしました。英語で発表するのですよね?

先田: 大学院では色々なことを経験できるのですが、学外での研究発表も一つの良い経験です。人前で話すのは元々得意ではありませんでしたが、発表練習をすることで、それを克服できます。国際会議の場合は、さらに、英語で発表しないといけないので、しっかり練習しないといけません。私は少し追い込まれた方が頑張れるので、このような挑戦をするのは良い経験だと思っています。

長崎: 英語で発表するのは大変なように思えますが、研究室の先輩方の多くが英語で発表してきているので、自分もチャレンジしたいと思っています。これからの時代のエンジニアは英語が喋れることも重要だと思っています。海外に行くというのも、大学院でできる良い経験の一つだと思います。

では、最後に高校生向けにアドバイスをお願いします!

先田: 高校の授業だと、RC直列回路とか、ダイオードの概要ぐらいしか授業に出てこず、半導体や集積回路とはどのようなものなのか分からないと思います。ですが、電気電子工学科で学べる分野というのは、想像よりも幅広いです。電気無しでは私たちは生きていけないですし、身の回りのあらゆるところに電気は使われています。高校生の時点では、今すぐに「やりたいこと」というのを見つけるのは難しいと思いますが、大学での講義をきっかけに、「これが面白い!」ということを見つけられると思います。

長崎: 私も入る前は、電気電子に入ってどのようなことを学べるのかよく分かっていませんでしたが、回路、半導体、材料、光、通信、電波、制御、情報など、電気電子の世界は想像以上に広いことが分かりました。半導体や集積回路は身の回りのあらゆるところで使われているので、自分が作ったモノで世の中を変えることもできると思います。興味を持ってもらえた方は、ぜひ富山県立大で集積回路を研究しましょう!

インタビューにご協力いただき、ありがとうございました!

吉河研の研究に興味がある方は、吉河研ホームページをご覧ください。